[高知県の斜面災害]
- [地質構造概要]
- 高知県の地質は東西方向に走る御荷鉾構造線,仏像構造線により北より三波川帯,秩父累帯,四万十帯に分類されている。
三波川帯は地下深いところで,高圧変成作用を受けた結晶片岩を主体としており泥質片岩,緑色(泥)片岩よりなり銅,マンガン等の鉱床もこの地帯に多い。又,ガーネット,石榴石等の変成鉱物も存在する。三波川の南部には強剥離性の黒色片岩(千枚岩)よりからなる清水構造線があり大規模地すべり地帯となっている。
御荷鉾構造線(御荷鉾帯とも呼ぶ)は弱い変成作用を受けた円礫状の瘤のある独特の緑泥岩で極めて風化粘土化し易く,クリープ性の地すべり地帯であり,その緑泥岩は鬼石と呼ばれ庭石として関東方面で珍重されている。
秩父累帯は強い破砕作用を受けた多種類の岩石が混在しており,その中に点在する大量の石灰石は非常に良質であり鉱物資源として利用されている。この石灰石には,フズリナ,サンゴ,キダリス(ウニ)の化石があり又泥岩,砂岩の中にはアンモナイト,二枚貝,羊歯,ソテツ等化石の宝庫となっている。
四万十帯は高知県の南半分を占めており泥岩,砂岩或いはその互層よりなり,北から南へ順次年代が1億年~2千年と新しくなっており整然とした地層をなしており地すべり災害の少ない地帯である。
東の室戸岬には班れい岩,西の足摺岬には花崗岩の堅硬な岩石の貫入が岬を作り,耕地は隆起海岸であり,山際には海岸段丘が連なっている。
県中央部には沖積層による細長い平野が東西に開けている。県内の河川には2~5万年前の円礫を含む河岸段丘が発達し,盆地を形成している。物部川沿いの美良布盆地はその典型的な例である。
- [地すべりと斜面災害]
- 高知県の地すべりは御荷鉾構造線を中心としてその両側に集中している。
御荷鉾緑色岩は地下のマグマが噴出したものと言われ,地下水を多く含み地下深くまで風化が進み(中村大王では80m以上),粘土質風化軟岩の層は地下水位が長い年月に渡って徐々に滑った為山頂でも低く平らで穏やかな斜面を形成し,地下水位も高いため棚田が多く開けている。
これに対して三波川帯は結晶片岩で崩落が多く急峻な山容を見せて標高も高く斜面は僅かに畑として利用されているのみである。
御荷鉾構造線に沿って走っている土讃線は昭和38年の台風の際に大災害を受け,線路をトンネルに付け替え変更すること等を余儀なくされた事もあるが,特徴としては降雨が無くても地すべりが発生するクリープ性地すべり地帯であり,トウジ山の地すべりにその特徴がよく現れている。
秩父帯は破砕帯地すべりであり豪雨を引き金として急峻な崩壊性地すべりが発生するため非常に災害の多い危険な地帯であり,昭和47年に60名の犠牲者を出し列車まで押し流した繁藤災害や昭和50年に77名の犠牲者を出した仁淀川流域の災害はこの秩父帯で発生しており,その恐ろしさをよく表している。
仏像構造線の北側には左横すべりの断層が多く走っており,工事中に何回かこの断層で破砕風化された礫或いは軟岩と堅硬な基岩とが垂直な鏡面をなしているのに遭遇し橋台の位置変更や掘削法面での思わぬ追加工事を必要とする事がある為,入念な地質調査が必要であり断層を考慮した解析を要する。
又,秩父累帯は砂岩,泥岩,石灰石,蛇紋岩,凝灰岩が入り乱れている為,崩壊機構の解析も難しく,地すべりや崩壊の予測も困難で対策工も慎重を要する。
四万十帯はプレートテクトニクスにより生成されたばかりの新しい地質であり地すべりは認められない。新しく柔らかい地層が表面を覆っている為,豪雨時には斜面の崩壊や土砂の流出が多く発生し,土石流による災害を生じる事が多い。
四万十帯東部の海岸段丘には第三紀層もあり人家の裏山の急崖は垂直な崩壊をしたり,どろどろになって流れ落ちたりする為,豪雨時には避難を要する様な危険地帯もある。
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